三日月の絆その3

昨夜の殺人鬼、あるいは、謎の仮面は彼だったのでは?

何かしら怪しい言動が出た時には……

しかし、そんな昇の葛藤とはお構い無しに、

「連絡を受けた瑞樹さんから手紙を受け取るために播磨宅に向かっていましたが。勿論やましいことはしていません。血が繋がっていないとはいえ後輩の妹さんをたぶらかすような輩に私が見えますか? ああ私はとても悲しいですね。後輩にそんな輩と思われていたとは。心外です事実無根です阿鼻叫喚のとんでもない事態です」

全く悲しくなさそうな顔で、ペラペラといつもの調子でマシンガンの如く言葉という弾丸を射出。

「人を疑うなとは言いません。人を疑うことは実生活では必要なものですし『信じる者は救われる』どころか『正直者は馬鹿を見る』という世の中ですからね。しかし内容が問題です内容が。わかりますか昇君? いくら私が女性に対して手が早いと言っても後輩の妹君を陵辱するなどと」

「もう、いいです」

大気圏を突破しかねない勢いで飛躍したストーリーを遮られた字久は、訝しげな表情で『私が八時にどこかにいたという事が、どうかしましたか』と尋ねる。

ちゃんとしたアリバイはあるようだ。

昇はほっと胸を撫で下ろす。

字久は昇のアパートの近所に住んでいる。その縁からか、ちょくちょく義妹の播磨瑞樹と彼は顔を会わせる事があるらしい。播磨家からは絶縁された昇だが、義妹の瑞樹だけは未だに自分を『義兄』として慕ってくれているようで、幾度も字久を通じて自身の様子を聞いているようなのだ。