恩師
穏やかな顔付きだが、声は別人のように硬く反問を許さない。そんな自身の声の硬さに気付いたのか、昇は慌てて天井に眼を逸らし、
「いや、その、よ。確かにこの『左手』を象ったのは爺さんだし、そのせいで魔術は使えなくなるわ、拾って貰った播磨家からは放り出されるわ散々な眼にあったが」
努めて軽い口調で話す。
『魔封じの刻印』を人工的に創り出す。搭也はその偉業を、播磨では誰も無しえなかった行為を昇に施した。確かにそれは成功した。他者の魔術を完全に封じ込める事が、昇という実験体で証明されたのだ。
が、やはりそれは本物には遠く及ばない粗悪品だった。
『魔封じの刻印』で封じられた魔力は体内にフィードバックする形で昇自身にダメージを与え、あまつさえ術者が放出しようとする魔力さえも封じ込めてしまう。これが原因で『魔封じの刻印』を人工的に創出する試みは頓挫したのだ。解呪も無論試みたが、ことごとく失敗した。
孤児であった昇が、播磨家に引き取られたのは、その魔術的な素養が一際高かったから。故に養子として引き取り、スパルタ式に『魔術方程式』を叩き込んだ上で、モルモット同然に、『魔封じの刻印』を施したのだ。
「でもこの家を叩き出されて、俺は良かったと思っている。そのおかげで」
そのおかげで、俺は『あの人』に会う事が出来た。
(約束だ。私と、お前との間に成立した会話は、誰にも喋らぬと)