使い魔
ティーカップに注がれた紅茶に反射する自身を見つめ、播磨瑞樹は自問する。何故、このような事になったのか、と。
まさか兄がこのような形で出てくるとは思わなかった。彼は播磨の家を遠ざけていたのだから、精々自分を見舞う程度だとたかを括ったのが、まずかったのだろうか。
短期間ならばともかく、未来永劫、叔父の行方不明を隠し通せはしないからと、昇には手紙の形で知らせたのだが……
開けておいた窓から、一羽の鳥が舞い込んでくる。赤い羽根に赤い嘴という特徴をもった、そこらでは見かけない鳩ほどの体長の鳥。
「収穫は?」
話し掛けるが、鳥は数度翼をはためかせると動かなくなり、
「そう……ご苦労様」
瑞樹の呟きと同時に、鳥はその羽根から姿を消し始め、ついには彼女の肩に一枚の赤い羽根を残して消え去ってしまった。
「何用です」
鳥に対して見せた暖かみが、一切欠落した声。それに呼応するかのごとく、香ばしい香りを発する水面が激しく揺れだし、ある人物をそこに浮かべる。
「いつ見ても手際が良い。中々優秀な使い魔だ」
その人物のものと思われる声が水面から発せられても、瑞樹は肩の羽を取り、紅茶に口をつけ、全く動揺のない優雅とさえ言える動作でティーカップをテーブルに置く。