首
「こんな小細工を弄さずとも良いでしょう」
すると瑞樹の背後から音もなく、一つの気配が天井から降りてくる。身にまとった青き法衣がふわりとなびき、華麗に着地。身を起こし、彼女を見つめる顔には白き仮面が空々しい笑みを象っていた。
「状況及び、依頼内容の確認にきた」
仮面によってくぐもった声が室内に響く。瑞樹は背後に佇むそれとは顔をつき合わせず、ソファーに座したまま、
「このまま継続を」
短い一言で会話を打ち切り、再びティーカップを手に取る。
「邪魔者は全て私流の方法で排除しても構わない、と?」
「……構いません」
ほんの一瞬、瑞樹が考え込んだのはどうしてだろう。その一瞬の逡巡を見透かすように、
「君の兄上を、私なりの手段で排除しても良いのだな。了解した」
せせら笑うように仮面は言葉を紡ぐ。
瑞樹がキッ、とソファーから後ろを向いた時には怪人の姿はどこにもない。彼がいた空間には手品のようにゆらぎが生じている。幻影による残留魔力だ。
瑞樹は天を仰ぎ、
「……余計な事に首を突っ込むとろくな事になりませんよ、兄さん」
自らの言葉の意味を噛み締める。
その呟きには昇の知る『播磨瑞樹』の面影はなく。
次期播磨家頭首の険しい表情しかなかった。