三塚
「兄さん! 起きて下さい、遅刻します!」
拡声器でも使って叫んでいるのか、と言いたくなる大声。昇の体をユサユサとやや乱暴気味に揺さぶっている。
さっきは執事のじいさんが起こしにきたんだが……
こんなに眠いのに起きてられるか!
まだ七時半になってないんだぞ!
「……あと……一時間は寝れる」
もっとも、ここから光洋高校までは電車を乗り継いで一時間かかるから、瑞樹の叫びは正当なものだ。
(毎度毎度遅刻してるんだから別に……)
「仕方ないですね。三塚、あれを」
氷のような冷たい声が室内に響くと、その後はシーン、と何も聞こえなくなった。瑞樹の要求に老執事が、
「瑞樹様、いくら何でもそれはやりすぎかと……」
困り果てた声を絞り出す。
一体何を相談してんだ。頼むからもう少し寝かせてくれ。
昇はごろん、と寝付けなかったベッドで寝返りをうつ。
「いいです。三塚がやらないと言うのなら、私が」
「……わかりました」
渋々頷くように三塚が答えると。
バシャア!
「おわぁあ!」
何だ! 一体何がこの身に起こったんだ! しゃっけえ! とにかく冷てえぞ! 尋常じゃなく!