飯
「ああ、これはっすね、小さい頃に火傷をしちまって、それを隠すためにしてんすよ。一々見せていると周りがうるさいんで」
もう習慣になっていると言っても良い嘘八百の説明を終えると、パタパタその左手を振る。
「……一つ、聞いてもいいかしら?」
「何すか?」
「……どうして、私をこうして昼食に誘ってくれるの?」
一呼吸遅れて答えた後、感情を灯さぬ青い瞳でじっと見つめられる。聞き方によっては恋愛的な話題だったのだろうが、こうも表情も、抑揚も無く尋ねられては色気の類はなかった。
「……昨日も、楠木さんが私を中庭に連れてきた後にこうして昼食を取ったし」
適当な日本語が見付からないのか、黙ったまま玲於奈は俯く。雪のように白く、しなやかな手がギュッと膝の上で握られている。
「ではお答えします。理由は、あの馬鹿のせいです」
真っ正面を見つめたまま昇はきっぱりとそう答えた。石膏のように、瞬き以外の動きを停止してしまった玲於奈に対し、昇はばつが悪そうに、
「はっきり言って、俺はあの時、先輩を連れ出そうだなんて考えていなくて、とにかく飯が食いたかったんですわ。ですから、俺は特に自分の意思で何かしようと思ってなかったんすよ。場の流れというか惰性というか、そんな感じです」