三日月の絆その3

儚い雪

儚い雪

頭を掻きながらすいません、と一言。

しかし、しばらくして玲於奈は昇を見つめる。

「……でも、楠木さんが私を連れ出した時も、貴方は来た。今も、貴方は自分の意思でここにいるんでしょう?」

表情は変わらないが、口調は不思議そうだ。どうも心底疑問に思っているようだ。昇はほんの少しだけ間を置き、

「……寂しそうだったから、かもしれませんね」

自然と出てしまった自身の解答に面食らい、あからさまに視線を逸らす目的で頭上の木を見上げる。

(な、何言ってんだ!)

彼女に、動揺の欠片も見当たらないと昨日言ったのはどこのどいつだ! あの彫像のように眉一つ動かさぬ無表情のどこに寂しさと言えるようなものが……

(……そうとも、限らんかな?)

首を傾げ、考える。

動揺していないからと言って、寂しくないとは限らない。

周りがギャアギャア囃し立てる中、彼女は見知らぬ異国の地で、孤独を感じていなかったとどうして言える? いくら周りが騒いでも、彼女の理解者は、彼女を思いやる者は、あそこに誰一人としていなかったかもしれないというのに。

八年前の、自分のように。

「……そう」

! 自分の背後を、音もたてずに彼女に取られた時の驚きとは比べものにならない。

玲於奈は、微笑んでいた。昇には、感情がほとんど読めない、あの彼女が、儚い、雪のように。