先輩
今にも、春の暖かさで消えてしまいそうな微笑みを。
「……確かに、そうかもしれないわね」
何か、言ってはいけない事を言ってしまったのでは?
昇は必死に次の言葉を探すが、
「でも……私には、深入りしない方がいいわ……あとが辛くなるわよ」
玲於奈の呟きを耳が捉えた。
怪訝そうに昇は、
「それはどういう……」
バチャン!
「お待たせ、レオナ」
昇の顔面には牛乳パックが投げ付けられていた。スタスタと近づいてくると、満面の笑みで玲於奈にパンを手渡す司影。
「……おい」
地獄の底から這い出て来た亡者のような声で牛乳パックを顔から取り払い、昇は司影を睨み付ける。
「うん? どうした、昇?」
コーヒー牛乳を片手で持ち、それにストローを突き刺しながら司影は何事もなかったかのように尋ねる。
「お前、どうして牛乳投げるんだ、しかも俺の顔目掛けて」
「良いコントロールしているだろ、オレ?」
ハハハハハと笑っているが、それに反して眼は笑っていない。字久に向けるような刃物の眼差しがそこにはあった。
「ははぁん、さてはお前、俺が先輩と仲良く……」
からかってやろうと、いやらしい口調で発した昇の言葉が途切れた。司影の眼が、急激に三十度位切り上がったのだ。