木刀
「オレさ、昨日、木刀を新調したんだ。オマエ、後で叩き台になってくれよ」
蛇に睨まれた蛙。昇は動く事が出来ない。
「……口は、災いのもとなり、だったかしら」
ぼそっ、と自分にだけ聞こえるように玲於奈が呟く。その口調は、誰かが聞いていれば、どこか面白そうに。
また、哀しそうにも聞こえた。
カラスが音もなく、頭上の木からはためいて行った。
「……っつう訳で、俺は、今日、寝不足の上に相当疲労しているんです」
一、二、ときて、体育だった三を飛ばし、四、五、と準完全睡眠を成し遂げた昇は、放課後、司影の強襲をどうにか逃れ……息を整えながら部室で机に突っ伏していた。
話し相手は閉じる事の無い口の持ち主、高遠字久。彼は窓際にもたれかかり、
「なるほど。播磨の叔父さんが殺害されて……大企業の人間は大変ですね」
さすがにペラペラと口を開く内容ではないと判断したのか、字久は神妙な口調で呟く。昨日の一件をそのまま言う訳にもいかず、昇は搭也が何者かに殺害されたという事だけを告げたのだ。朝は殺人犯から身を隠すために瑞樹の休学手続きをして遅れたのだと。
事実ではある。