暮崎
自分が寝坊したという、極めて日常的な事と。
相手が、魔術師である、という非日常的な点を除けば。
「ですが、この時期に美女の転入生が二人、ですか。さぞかし男子生徒諸君は喜んでいるでしょうね」
「……誰も、瑞樹がここに転入するなんて言ってませんよ。あいつが通う高校を休学する、と言っただけです」
昇の眉間に深いしわが出来る。
「私としては、君の側にいた方が彼女も安心できるだろうと推測した上で述べただけですよ。それとも図星でしたか? ウン? どうしたんです、その不満顔は? まさか『瑞樹に手を出す奴は俺が一人残らず殺す!』というような物騒な宣言をする訳ではありませんよね?」
「……そこまで過激じゃありませんよ」
不服そうに呟く昇だが、『そこまで』と答えたのなら、ある程度は『過激』な対応を取るかもしれない、という事なのだろうか。
それを口に出そうかと悩む字久。
一方の昇は昇で、
(二人? ということは、残る一人は)
「字さん、まさか、もう暮崎先輩に手、出しましたか?」
昇の質問に対して、顎に手をやり考え込んでいた字久は、いかにも軽薄そうな笑みを口元に浮かべる。
「ほう? 昇君はあの手の容姿が好み」
「出したんですね?」