三日月の絆その3

貴方

貴方

ここまでくると、大した執念だ。『マムシの字久』と改名したらどうだろうか?

「したのですがこれも空振り。おかしいんですよはっきり言って。百戦錬磨である私の尾行に気付くということ事体が異様ですし、アパートにも帰らないとなると、他の場所に住処を確保しているとしか思えないんですね。とても少ない確率ですが司影君のように私を嫌っている生徒に匿ってもらった、というのはあり得るのですが」

確かに、腑に落ちない。

一体、何をしていたのか?

(……ジジイを殺した魔術師が、彼女?)

……馬鹿馬鹿しい。いくら一昨日のアリバイがないからと言って、何故そんな極端な話が出てくるのか。証拠も何もないではないか。

自分の考えに嫌気が差して顔をしかめてしまう。どこか普通ではない雰囲気を漂わせているが、それはあの美貌と感情を表さない超然とした態度が原因だ。人殺しが、自分の知り合いである訳がない。そんな訳が……ないじゃないか。

アホらしい。自分に悪態をつき、いらつくように席を立つ。夕焼けに照らし出されたそんな昇の後姿を見つめ、部屋を出たのを確認すると、

「貴方が頑張ってくれれば、私がなすべき事も自然と減ってくるのですが……仕方ありませんね。最悪の場合は私が処理するしかありませんか」

眼鏡のつるに手をやり、窓に眼を向ける。顔にはいつも貼り付けている軽薄な営業スマイルではなく、ひどく酷薄な表情。

その眼は、鷹のように鋭い、獲物を求める眼だった。