質問
踏み締めるグラウンドの砂利はどこか空虚。見上げる空の夕焼けも異世界のように白々しい赤。
何か、このごろ、オレ、変だ。鞄を部室に置き忘れてたり、昨日も記憶が飛び飛びになっていたし……
どうしたんだ、オレ?
「楠木さん?」
「ん? なに、レオナ?」
考え事をしていると脇に居る彼女に声を掛けられた。
数歩歩くと、
「……何か、考え事、していた?」
一言一言区切るように問い掛ける。
そう。記憶があやふやなのはここ最近。昨日、彼女と二人っきりで話をしてからだろうか? あるいはもう少し前か?
もう、それすらも曖昧だ。
「いや、大した事じゃない」
そう、と隣りにいる玲於奈が答えたのにとても遠くから聞こえたような気がする。
何か考え込むような沈黙の後、玲於奈が口を開いた。
「……質問があるんだけど」
「何?」
「端山君を、楠木さんどうは思っているの?」
頬がサッ、と赤みを帯びる。
「……ど、どうって……」
「好きなの? 彼を、異性として」
まともに、ストレートを、クリティカルでもらってしまった。
ずるい、と司影は思う。普通こういう話題に移る時はそれなりの予兆があるものだ。周りがシーンとしているシリアスな状況か、あるいは尋ねる相手をおちょくりながら聞き出したりと、普通はそうなのに。どうして無表情かつ、自分を直視したままそんな質問が出来るんだ、彼女は?
「オ、オレ、今日用事あったんだ。じゃ」
たまらず司影は顔を上に背け、走り去っていく。その背を見届ける青い眼は、恋敵に対する者ではない。
「万一の時の……決意が……鈍るわね」
沈黙から発せられた声は苦しげ。知人を見届けた瞳に宿る感情は、どう表せば良いのだろう。
ごう、と突風が土煙を巻き上げ、桜を散らした。
空を見上げた彼女の表情は、誰にも見えない。
不吉そうに、カラスが空を舞っていた。