振り子
庭も広いが居間も広い。ゆったりとした空間には、大きく柔らかそうなソファー。品を感じさせるテーブルが三つのソファーの中央に据えられ、そこでは執事とメイドがいそいそとお茶の準備をしている。戸口にある棚には年代物のワインやグラス、その横に大きな振り子式の古時計。テーブルには高そうなティーカップに香ばしい香りの紅茶。
失礼しました、と執事とメイドが退室していく。
あまりにも覚えのない空間だ。古時計には幾分、あったような記憶が無きにしも非ずなのだが。
「兄さん? どうかしましたか?」
きょろきょろと辺りを見渡していたのがバレたらしい。我ながら落ち着きが無い。
「いや、ちょっと物思いに耽ってた」
搭也のジジイが死んだ事よりも、義妹―瑞樹―の変化の方がよほどびっくりした。キビキビした態度、腰まである長髪をゴムで一つにまとめたポニーテール、自分の胸元まで伸びた身長……顔にはいくらか面影が残っているが、刃のような鋭い黒瞳はまるで別人。
物腰といい、言葉使いといい、これではどこぞの良家のお嬢様ではないか。
(……良家のお嬢様だよな、瑞樹は。播磨の跡取なんだから)
「変わったな、瑞樹」
はあ、と昇は髪をばりばりと乱暴に掻く。
それを見た瑞樹は嘆息する。
「四年ですよ、兄さん。変わらない方がどうかしています。それとも、兄さんは私が、最後に会った時点の容姿そのままだとでも思っていたのですか?」