刻印
これまでのおはなしで、『むかえ』が『あたらしいかぞく』のこ
とだとわかっていたぼくは、
「あした、くるって」
とてもちいさなこえでこたえた。
そうか、っていって、おぼうさんはだまりこむ。
このひとは、せんせいみたいにたくさんのことをしっていたけど、それはぼくのほうからきかないと、おはなししてくれない。
いつかきこう、いつかきこう、っておもっていたことをはなそうと、いきをおおきくすった。
「このひだりて、なんなのかおぼうさん、わかる?」
そういって、ひだりてについた、さんかくかくけいみたいなきずをおぼうさんにみせる。
おぼうさんは、あみがせをたてにゆらして、
「……『概念の具現』の一種、『魔封じの刻印』。それはあらゆる魔力の源を断つ、魔術師殺しの逸品。これと向き合いたいと考える魔術師はそういまい」
そういうけど、ぼくはなんのことかよくわからない。
ただ、すごいものだ、っていいたいのはわかる。
でも……
「でも、ぼく、できそこないなんだ」
みんないってた。
ぼくは、けっかんひんだ、って。
まじゅつのつかえないものを、『とうしゅ』になどできるかって。
「みずきも、いろいろなことできるのに、ぼく、なんにもできないんだ。だから、いきている『かち』なんてないんだ。おぼうさんがいっているみたいに、すごいちからなんてないんだ」
おぼうさんはぼくのほうをみて、
「小僧」
ぼくのほほがビタッ、っておとがした。おぼうさんにたたかれたんだってことが、すぐにはわからなかった。
よこにそれたぼくのかおを、おぼうさんががっしりとごつごつしたてでつかむ。
「二度とそんな台詞を吐くな。自身を貶める言葉は、そのまま自身への呪いとなる」
あみがさをあげると、めのいろがかたっぽうだけあおい、おぼうさんのかおがみえた。
ひげがもじゃもじゃはえていて、ほほにばってんのきずがあるそのかおは、とてもおこっているようにみえた。