三日月の絆その3

黒き光

黒き光

青く、静かな空間に響くのは靴音。

 そして、愚痴っぽい独り言。

「……ゴタゴタしてきやがったな」

 魔は、魔を呼び寄せる。

 魔術師間にある格言通りだ。

自身の『魔封じの刻印』を手始めに、殺人鬼とそれに対する仮面。

そして、自身の知る最強の魔術師、播磨塔也殺害犯。

「マジで堪ったもんじゃねえ」 

 昇にしては珍しい、苦々しい口調。誰が敵で、誰が味方なのか。何を目的に彼等が動いているのかもわからない。

「俺を殺そうとしていた奴が、『殺人鬼』か『仮面』なのか、あるいは両方か。それだけでもわかれば、少しは状況がつかめるんだが」

 とにかく、相当な準備が必要だ。

数年前から試している魔術方程式は未完のもの。これが使えれば、何とか奴等にも対抗出来そうなのだが。

昇は戸を開けて教室に入り、

「っと、ここだったが……よし、確認終了。大丈夫だな」

そう言って床に左手をペタペタと押し付けている。白い手袋を外した、その左手を。

「これで二つ目だが、今日はこの辺で」

いざという時は、なんとかここに相手を誘い込む。そうすれば、自力だけでは限られた魔術しか扱えぬ自分にも勝機があるはずだ。

両手をポンポン、と払い、手袋をし、戸を開けて教室を出ると、

「……何だ、これは?」

普段よりも随分暗く見える。夜、だということは先刻承知だ。

三日月が空にはあるはずなのに、その明かりが全く差し込んでこない。影と闇。無音の中で黒き光だけが昇を照らしている。