三日月の絆その3

御名答

御名答

御名答、という簡潔な返答。

 名前には物質や人物の本質的な力が宿るという説。魔術師の間では素養がその名に表れると言われるが、現実には些細なもののはず。名前だけでその本質を束縛することは出来ない。

何故、ここでその説が出てくるのか。

「彼女の名前を考えてみれば、解答に辿り着かないかしら?」

 闇の彼方から聞こえる声。

 彼女? 名前? 

司影……影を司る者。

「まさかっ! 『対極分割』か!」

 切迫した昇の声が通路に反響する。

「そう、私と司影は別物。『楠木』、は司影が引き取られた養子先の苗字。苗字だけを気にして、名前にまで気を配らなかったのは痛いわね。

ところで私の名前なんだけど、死をもたらす影で、『死影』、なんてどうかしら?」

笑っているはずなのに、眼が全く笑っていない。感情と表情が表裏一体の如く、異なる性質をもって眼と顔に表れている。

「……それでか。一昨日の昼間には魔力が残留したのは」

「正確には起き抜けで、調節が巧く出来なかったから洩れたんだけどね」

音も無く『死影』が一歩を踏み出す。

「とある坊主が必死に封じたせいで、私は全然表に出られなくなったわ」

とある坊主?

……ひょっとして、『あの人』か?

「そんな時に、貴方が『魔封じの刻印』で封印を解体してくれたのはとても嬉しかったわ」

『こっくりさん』の時に使ったあれか!

舌打ちし、昇は左手を掲げる。

「だから、きっちりお礼をしないとね!」