三日月の絆その3

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

「普通避けない? いくらかわした後が苦しい体勢になるからって、右腕を盾に使う? 馬鹿としか言い様がないわ」

右手を突きつつ軽やかに着地すると、彼女は忌々しそうに言葉を紡いだ。その言い草に昇は舌打ちしながら、右腕に突き刺さったナイフを一気に引き抜く。

恐らく、彼女の人格は魔術によって編み出された『者』。わかりやすく言えば、多重人格。その攻撃性を封じるのに『司影』が必要だったのかもしれない。

(『魔封じの刻印』を使えば、あの人格だけを一撃で葬れる!)

赤い刃を窓に捨て去り、ドクドクと流れる血液が床に零れ落ちていく。

「……厄介極まりないわね、その刻印」

実に苦々しげに語る彼女は、吐き捨てるように言った。

「あの坊主が作った私の封印と、その手袋の封印、本当に似てるわね」

「それで?」

じり、じり、と昇は左側面から少しずつ円を描くように間合いを詰めていく。

「あの坊主のせいで私はずっと表にでれなかった。あのクソ坊主の面影は全部消す! 覚えてらっしゃい!」

空間に光で象った別種の魔法円が次々と浮かび上がり、連鎖的に爆発。振動に校舎が悲鳴をあげるように縦に揺れ動き、窓ガラスが次々と割れ、ぱらぱらと砂利のようなものが天井から落ちてくる。通路の床には無数のひびと散乱し、細かく砕けたコンクリート。

昇は余裕すら感じられる動きで後退し、その範囲外へと逃げるが、

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とは良く言ったもんだな……まあ、今回は生き残っただけでも良しとするか」