メイド
「最初にこれを見つけたのは屋敷のメイドです。時刻は夜の七時頃。彼女は叔父様専属のメイドで、いつものように決まった時刻に叔父様の夕食を運びにきたそうです」
こぢんまりとした、机以外には何一つ物品の無い部屋で、壁にぶちまけられた赤―恐らく、血―は無言のメッセージを二人に放っている。
「話では、ノックをしても全く返事がなかったので扉を開けてみたら、ぐったりとした叔父様を小脇に抱えて、何者かが窓から連れ去ったそうです。部屋が暗かったため顔までは、はっきりと見えなかったそうですが」
あのジジイを、連れ去った?
ではあの壁の血は……まさか?
……信じられない。
「血液鑑定をした結果、壁の血痕は叔父様のものだそうです。警察の知己には圧力を掛けておきましたから、新聞沙汰にはならないでしょう」
そんな昇の心を読んだように、この血液が搭也のものだという決定的な証拠を瑞樹は言う。床にはボタボタとこぼれた血液の跡があり、傷の深さが伺える。凄惨な光景だが物色はされておらず、魔力も全く残留していない。
「何が……あったんだ?」
壁の朱色を見つめる昇の呆然とした問いに、瑞樹は弱々しく首を横に振る。