三日月の絆その3

遺体

遺体

そして、何故殺害犯は搭也の遺体を持ち去ったのかという疑問。

一番考えられるのは、搭也の遺体から、殺害犯自身が行使した魔術方程式を探られ、正体を逆探知されるのを恐れたというもの。

(だが、それなら遺体を焼却するなりして体そのものを消せばいいんじゃないか?)

 人間一人骨ごと消す炎、搭也を殺せる者ならば容易く行使するだろう。よって、この線は消える。

 搭也との闘いによって、もう魔術を行使する余力がなかったのだろうか?

(それじゃあ、ジジイ以外の血痕が発見されていない理由が説明出来ねえだろ)

 殺害犯は、痕跡からすれば搭也を圧倒的な力でねじ伏せたのだ。それこそ、彼を殺害した後に、戦いで生じた自身の残留魔力を消去する位の余裕は、充分にある力量。現場も、それほど荒れてはいなかった。

(一体何が理由で、犯人はジジイの遺体を持ってった?)

 遺体を持ち去る、いや……持ち去らなければならない理由があったのだ。何故?

「……呪術、か?」

 呟く昇は顎に手を当て床に視線を向ける。

彼に呪術を掛けていたとすればどうだ? 

呪いによって弱った彼を倒す、というのであれば腕に覚えのある魔術師ならば可能かもしれない。

彼の遺体を持ち去った理由としては、呪術方程式の対抗策を編み出される恐れから。搭也クラスの超一流はおいておくとして、普通の一流魔術師では人間一人を骨ごと焼却する炎の行使事体は可能だろうが、短時間で練るのは難しい。いつ屋敷の者が部屋を訪れるかわからない状況では連れ去る方が良いと判断したのはあり得る話だ。